システムがさらにスッキリしました。 クラシック音楽用のシステムが、プリがSpectral DMC-30SVに、パワーがSpectral DMA-260 series2 に変更となりました。 実はSpectralのアンプは、何度も聴いたことがあります。 最初は大学在学中で、マーチンローガンのスピーカーをSpectralのプリとパワーアンプで 駆動していたのですが、えらく高域寄りの空間描写に固執したような鳴り方をしていました。 当時はタンノイのスターリングを愛用し、伸びやかでスケールの大きな低域が好みだった こともあり、選択肢からあっさり外れてしまったものです。 その後も、大学近くのショップで何度か聴きましたが、マーチンローガンにサブウーファー のようなものを付けて聴いた時も、あまり感心しませんでした。 それが、再びSpectralの名を私が信頼するオーディオショップで耳にし、たまたま そのお店が処分価格で放出する現行のDMA-260 series2を拙宅で試聴したところ、 真空管アンプのようなきめ細かさに加え、音の立ち上がりが素早く力感があり、Spectralならではの 空間描写の良さも手伝って、そのサウンドに惚れ込み、購入を決定。 さらにショップの試聴用デモ機のSpectralのプリアンプ、DMC-30SCが処分価格で放出される と聞き、最新のDMC-30SVと拙宅で同時比較試聴することにしました。 DMC-30SCでは全体のエネルギー感が高域寄りで、もう少し低域の凄みが出ると良いと思っていたところ、 30SVでは浮遊感と空間描写能は30SCより劣るかも知れませんが、重心が下がって伸びやかでかつ 芯のある低域を聴かせてくれたので、思わず身を乗り出して聴き入ってしまいました。 処分価格ではないので、高額ではありましたが、あの音を耳にしてしまっては、後には戻れません。 ヤフオクで使用しないアンプとケーブルを売却し、最新のDMC-30SVを購入することにいたしました。 クラシック音楽を聴くには低域まで伸びとしなやかさが欲しいし、夏場の暑い盛りに真空管パワーアンプの EAR509 II以外の選択肢はないか、 いろいろ探していて、音の鮮度とローエンドの伸びと切れに関しては、Spectral DMC-30SVとSpectral DMA-260 series2 の組み合わせに辿り着いたものの、Eau Rouge ER-PS Signatureの電源ケーブルを導入した段階では高域のエネルギー感が強く、 「ちょっと声高の目つきが鋭い、ヒステリー気味のお嬢さん」的鳴りっぷりで、その時点ではスピーカーケーブルはOdinが 最もイメージに近いと思ったのですが、エージングで改善されるレベルを超えている気がして、もう少し落ち着きが欲しい と思っていました。 たまたまMAXオーディオのオーディオフェアにTim de Paravicini氏が来訪する旨を伝え聞き、ご尊顔を拝したく EARのブースを訪れた際、 Yoshino Trading(ヨシノトレーディング)社長で、奥さまの芳野さまより、 Yoshino Tradingが輸入代理店を務める、「Kubala・Sosna」 のスピーカーケーブル、Expression(エクスプレッション)をお借りして鳴らしてみることにしました。 国内はおろか、アメリカの「ケーブルカンパニー」という、ケーブル専門店でも識らない、超マイナーな アメリカのケーブルメーカーだったりします。 しかしそのサウンドは高域のみずみずしさと色艶が見事で、この点に限ってはNORDOST Odinをも凌ぐ程のレベルでした。 もっとも、低域がボテボテ気味で切れ味がなく、NORDOST Odinの芯があって、コリッとした中〜低域の歯ごたえ のようなものが感じられず、この時点では取って代わることはあるまい、と思っていました。 値段が識りたくてホームページを見て、これがベーシック・モデルと知って驚きました。 なんと、NORDOST Odinの10分の1の価格! これはトップ・モデルのElation(イレーション)を試すしかない、と発作が起きて試聴機をお願いしたのですが、 残念ながらないとのこと。それならば、と、注文してしまいました。 トップモデルでも、NORDOST Odinの3分の1近くの値段! ちなみに画像の最下の電源ケーブルはEau Rouge ER-PS Signatureです。 このケーブル、 年末に届いて繋いだ当初は、ボテボテ気味の低域でしたが、翌日には引き締まってきて、高域が繊細でいながら、 粒立ちが良く、透明感もあり、低域がふくよかで重厚なのにキレもある、実に良いとこ取りのような不思議なケーブル なのです。 確かに華かさ、ゴージャスさ、中低域のキレの点ではNORDOST Odinに及びませんが、懐の深い伸びやかで、 それでいてボテボテにならない低域は、見事です。 もし、Sonus Faber Stradivari Homageを鳴らしているクラシック音楽用のシステムでなく、ジャズを鳴らしている DD66000のラインナップなら、NORDOST Odinの方を選ぶでしょうが、まるで拙宅のクラシック音楽用のシステムの、 NORDOST Odinですら不満に思っている部分をオーダーメイドで一つ一つ解決して作り上げたケーブル、と言っても 良いくらいです。 ひょっとしたら、メーカーの試聴機が拙宅と同じ、ということは、まずあり得ないでしょうから、非常に近い 組み合わせなのかも知れません。 しかも、これ、ヨーロピアン・ジャズなどをかけると、しなやかで色彩感豊か。 DD66000のラインナップより高解像度なのも手伝って、最近の音の良いジャズ・ディスクやハイレゾをダウンロードして 聴くには、むしろ好ましく思える程。 これには再度、驚きました。 DD66000のジャズ用ラインナップに関しても、進展がありました。 それはEau Rouge ER-SP735のスピーカー・ケーブルです。 音の粒立ちの点ではNORDOST Odinに軍配が上がりますが、シンバルの伸びやかな響きと、伸びていながら、 切れ味の良い低域を聴かせてくれるこのケーブルは、そんなに太くはないし、電源ケーブルのEau Rouge ER-PS Signature ほど凝った造りをしているわけではありません。 しかし高域の芯の部分とローエンドまでしっかり伸びていながら、だぶつかない点は共通するものがあります。 たぶん、Eau Rougeの製作者は、そういった音が好みなのか、目指す音のイメージがそうなのでしょう。 NORDOST Odinという高い授業料を払って、拙宅のシステムにさらに適合するケーブルがあることを識ることが出来て、 ケーブルの選択肢がさらに広がった感があります。 しっかし、まさかNORDOST Odinがシステムから消えてしまうとは、夢にも思いませんでした。 ヴァレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団(=キーロフ歌劇場管弦楽団)のストラビンスキー作曲「火の鳥」 は、録音がとても良いのですが、弦バスの密やかでいながら、凄みのある音をうまく再生出来るシステムはなかなかありません。 Kubala・Sosna「Elation」は、それを見事に聴かせてくれました。 静謐性に優れ、緻密でダイナミックレンジが広く、美しくしかも芯のある高域。 低域はスケール感があって深々としていながら、いざとなった時には量感を伴いながらも切れ味のあるサウンドは、 なかなか他では聴くことが出来ないかと思います。 もう少し華やかですが、これに良く似たサウンドを、かつて耳にしたことがあります。 1957年にMC型ステレオカートリッジを開発。 1974年にはFB(フラックス・ブリッジ)型カートリッジ(MI(ムービング・アイアン)型カートリッジと同じ原理)を開発し、 2015年2月6日に90歳で亡くなった、Joseph Grado氏のライン・ケーブルやヘッドフォンを彷彿とさせるのです。 1983年にニューヨーク市ブロードウェイに建設され、マンハッタン区リンカーン・センター内に1966年移転、開業した 「メトロポリタン歌劇場」でテノール歌手として出演。 ウェストフィールド交響楽団の演奏会では歌劇「オテロ」の主役を演じたりもした、Joseph Grado氏。 Kubala・Sosna「Elation」を聴いていて、Joseph Grado氏の手によるラインケーブルを最初に聴いた時の記憶がまざまざと蘇ってきました。 Kubala・Sosnaが目指す響きの最終到達地点は、「リッチでウォーム、なおかつ音楽の響きが高い透明度を持つ」 ニューヨーク市マンハッタン区セントラルパークのすぐ南に1891年創設、ミッドタウンのランドマークでもある 「カーネギー・ホール」サウンドだとか。 このホールは、クラシック音楽だけではなく、ビートルズやローリングストーンズ、フランク・シナトラ、ボブ・ディラン スティーヴィー・ワンダー、デヴィッド・ボウイらも公演したコンサートホールで、ある意味、オールラウンドのサウンド が求められます。 しかし個人的に聴き込んでみて、やはりクラシック音楽が一番。 でも、ヨーロピアン・ジャズや女性ボーカルがこれまた見事なのです。 DD66000のグイグイ迫って来て、「カツーン」と鋭く突き刺さるシンバルの音も魅力なのですが、Kubala・Sosnaケーブルを 得てSonus Faber Stradivari Homageで奏でるこのサウンドは、別の魅力を引き出してくれます。 今のところ、他には大きな変化はありませんが、さらに少しシステムを整理してみようかとも思っています。 それにしても、私の愛するオーディオ・メーカーの創設者達が、次々と亡くなっていきます。 フリッツ・ゼンハイザー博士 2011年 5月17日 98歳没 オーディオテクニカの松下秀雄 2013年3月5日 93歳没 Sonus Faberの創業者、Franco Serblin (フランコ・セルブリン)2013年 3月31日76歳没 スレッショルドやGAS AMPZiLLAにAmpzilla2000,Ambrosiaの設計者James Bongiorno氏も2013年に逝去したとか。 1943年生まれですから70歳でしょうか。まだあと10年はオーディオの世界で頑張って欲しかった気がします。 こういった個性溢れる製作者による銘機もまた寿命を迎え、かつてのサウンドを聴かせてくれる機器が姿を消して 行っています。 Marantz model 1 & 9はその最たるものでしょう。 幸い、Marantz model 1はかつてハーマン・インターナショナルで修理を担当していた方が興した鳥栖エレクトロニクス によって、錆びて接続も悪くなったRCAジャックと電源プラグ&コネクター部を交換。内部のコンデンサー類も状態の 良い物に入れ替え、以前のみずみずしいサウンドが蘇りましたが、Marantz mode 9は電源トランスが巻き直さないと いけない状態で、まだ手元には戻ってきていません。 EMT927Fはゴロ音が大きくなってきたので、一部の部品を入れ替え、完全な状態までもう一歩のところ。 Mark Levinson氏はまだご健在ですが、私が好きなのは、初期のMark Levinsonブランドのアンプ群です。 LNP-2Lは故障したモジュールとRCAジャックを入れ替え、野太さと繊細さを備えた、初期のMark Levinson LNP-2Lの サウンドが蘇りました。 ML-2Lも修理とオーバーホールを終え、20.6と共に戻ってきました。 かのJames Bongiorno氏の手によるGAS「THAEDRA」(初期型プリアンプ)とGASアンプジラ初期型は修理で復活したのですが、 GASの後の時代のSUMOのプリアンプのAthenaは復活不能。 SUMOのパワーアンプPOLARISは無事、修理して戻ってきて、今は某内科クリニックの待合室用BGMアンプとして 良い音を奏でています。 EARのEAR864BとEAR 861は故障することもなく、修理を終えたタンノイのスーパーレッドモニターと共に元気よく 鳴っています。 EAR912とEAR509 IIはKubala・Sosnaケーブルを介してSonus Faber Stradivari Homageを鳴らすと、実にエロティック、 デカダンスの極みのサウンドを聴かせてくれます。 バッハ(Johann Sebastian Bach)のヴァイオリン・ソナタや教会音楽、中でも女性2声によるCouperin 'Motets'には 高貴さを通り越して、禁断の香りが漂います。 Tim de Paravicini氏はまだ健在で、アナログレコードに現在は精力を傾けている模様。 長生きされることを心より祈るばかりです。 |