■ オーディオ隔離病棟 ■

〜 電線病病棟:インターコネクトケーブル 〜


オーディオの世界で、ここに足を踏み入れたが最後、泥沼にはまってしまって、大変なことになるのがケーブル(電線)の世界です。 スピーカーやアンプにお金をつぎ込むのは、目にも見えるし、音質的な変化も大きく、変えただけの価値、あるいは見返りが あるものです。

一方、「ケーブルでは音の本質は変わらない」とおっしゃる方も居るように、確かにアンプやスピーカーを換えるようには 劇的には変わらないのですが、「あともう一歩欲しい」という時には、本当に拝みたくなる程の効果があったりします。

この「電線病」が高じると電源コンセントや屋内配線、さらには配電盤、果てにはジャズ喫茶メグのオーナー寺島靖国先生のように敷地内に 電柱を建てて、個人用柱上トランスを取り付けることになってしまい、オーディオの奥深さと己の業の深さを実感することでありましょう。

文中に「アメリカで買うと」とあるものは「オーディオ関連リンク集」のオーディオショップ編にも出ている、 その名も「Cable Company」という ショップで購入した場合を主に示しています。価格は日々変動している上に、ドル・円レートも刻々と変わりますので、多少異なる場合が あります。

2013年5月のゴールデンウィーク頃より、上記の写真、一番手前のアンプ付きスピーカー、TANNOY Reveal 601aでケーブルを取っ換え 引っ換えやってみてわかったことがあります。 このスピーカー、ケーブルの音を実に素直に表現するというか、その違いを如実に聴かせてくれるのです。
確かにラインケーブルと電源ケーブルしか繋ぐ場所がないので、片方を固定すれば、音の変化に寄与するのは、 ラインケーブルか電源ケーブルしかありません。

その経過は「実験工房」のコーナーで詳しく述べていますが、今回、インターコネクトケーブルの比較試聴を行うにあたり、 電源ケーブルはPRO CABLE社オリジナルの電源ケーブルで、Web上の価格\9,800、1.5mモノ8,300円と、 比較的廉価にもかかわらず、音の良かった、 「WATTGATEプラグ+A2D SOLUTINS シールド電源ケーブル 3m」 を基本的に用い、相性が悪くてどうも首を捻ってしまうようなものに対しては、今まで拙宅のメインシステムで使っていて素性のよく わかっている、AETのEvidence ACでも試聴することにしました。
なお、確認検証作業が困難な古いケーブルに対しては、当時使用していたメインシステムでの感想となっています。

RCAタイプのテストでは、Reveal 601a側には、カルダスの新型 RCA/XLR変換プラグを使用しています。黒っぽい旧型に較べてハイ落ちが少なく、高域の粒立ちも見事で、 音の鮮度が上がった感じがします。長さが旧型に較べて短くなっているのも特徴です。
ただ、この変換プラグを付けると、どうもこの音が乗ってしまって支配されてしまうようで、RCAタイプは 粒立ちの良い音になってしまう傾向がみられ、評価の際には注意が必要だと思いました。

トランスペアレント・レファレンス


トランスペアレント最高峰のインターコネクトケーブル。一見、 ウルトラとほとんど変わらないのですが、サウンドはワイドレンジで芯が出てきて、一段と大きなサウンドステージが広がります。 位相を整えるとか言う「箱」がどうやらポイントの様ですが、そこのあたりのノウハウは企業秘密の様です。価格は20万円を超えます!
拙宅の初期のハイエンド・ケーブルの一つです。


CARDAS Golden Cross Interconnect


カルダスの最高峰インターコネクトケーブル。奥深さと懐の深さは見事と言うほかなく、 暴れずにしっとりと美しい高域が秀逸。低域の伸びも素晴らしく、クラシック音楽にはもってこいのケーブルです。
ただ、そのあまりにも整えられたサウンドに、人工的な作為、異和感を感じる方がいらっるようです。
芯線の太さと並び方を徹底的に研究し、黄金分割とも言うべき配列を得ています。かつてHexlink Golden 5Cというケーブルがありましたが、こちらの方が低域は伸びていましたが、 高域の伸びやかさ、つややかさに欠ける憾みがあり、使う場所を慎重に選ばなければなりませんでした。新しいGolden Crossになってからはバランスも良く、 重宝しました。価格は国内で買うと20万円を超えます。アメリカで買うと1mのペアで$660.00でしたけどねぇ。
拙宅では2000年以前に活躍したケーブルです。

JPS Labs Superconductor


カルダスとは対極にある、JPSの単線系のインターコネクトケーブル。シャープでコシがあり、 華麗で芯のあるサウンドが特徴ですが、いかんせん、ケーブルが固くて取り回しに一苦労します。SuperconductorとSuperconductor 2では、 Superconductor 2の方が芯線も太くワイドレンジで透明感があり、繊細でかつ腰の据わった音がします。Superconductorの方は多少荒い感じがしますが、 「音のケバ立ち」が見事で、ここまで来ると、もう好きずきかもしれません。ヴィンテージ・オーディオを楽しまれている方には、ぜひお薦めしたい ケーブルです。
写真は左がSuperconductor、右がSuperconductor 2です。
1998年に代理店「Audio Reference」(TEL:042-574-3185)がついて、国内でも買えるようになりました。現行のSuperconductorは、 メッシュの布外皮が付いた「Superconductor+」と「Superconductor 2」となっています。価格はRCAアンバランス・タイプ1mもので、 前者が\65,000、後者が\130,000です。
拙宅では2000年前後、TANNOY G.R.F.MEMORY /TWWが活躍していた頃のメインケーブルです。


Red Rose Silver 1


あの、マーク・レビンソンがチェロを辞し、新たにオーナーになって始めたRed Rose Musicの インターコネクト・ケーブルです。Silverとある様に、銀線です。とにかく深々とした中低域と、気品あふれる中高域。しなやかで、美しさは格別 のものがあります。かつてのチェロのアンプ群に通じるものがあるようです。国内で6万円前後で入手できるのも嬉しい限り。ちょっと引っ込み加減 の音場が気になると言えば気になりますし、もう少しタイトで締まりが良い低域があれば、鬼に金棒なのですが……。ケーブルが柔らかいのは有り難い ですね。
2001年夏頃、サブシステムのSonus faber Electa AmatorのシステムでLINN IKEMIとEAR V20間で活躍していました。

Burmeister Interconnect cable


JPSのSuperconductor 2が単線系の骨太でストレートな鳴り方を得意とするのに対し、 このドイツのメーカー、Burmeister社の銀線は、銀線独特のキラメキを表に出さずに、レビンソンのRed Rose Silverの様にしっとり感も持ちながら、 明るくもっと前に出てくるサウンドで、これくらいシンバルの音色を描き分ける銀線ケーブルは、他に見あたらないでしょう。とにかく音にストレスを 感じさせず、ボーカルがスッと出て来るし、ナチュラルでいながら質感を見事に描き分け、その実、解像力もあり、音場の美しいことは、見事と言う ほかありません。アメリカ経由で購入、定価$870ドルをケーブルカンパニーで$799 で入手。価格設定も非常に良心的です。 JPSはヴィンテージオーディオシステム向きなのに対し、Burmeisterは最新の音場重視型システムに最適で、 音像もRed Rose Musicに較べてシッカリ、ハッキリしていますので、幅広く使いやすいケーブルだと 思います。

BELDEN YR23169 T-203D FOR AUDIO OL(1.0m)


ソニーが自分のスタジオ用にベルデンに特注した、FOR AUDIOを冠するインターコネクト用ケーブル。 結局、配線の際にケーブルが硬くて使用するのが難しく、同じ様な色合いで、別の柔らかいケーブルを 使用することになるのですが、そのケーブルとでは音の毛羽立ちや粒立ち、質感の正確さと言う点で、 FOR AUDIOとうたっているだけあって、こちらのケーブルの方が良い様に思います。
写真は1.0mに切って、WBTのプラグで作ったものです。 2001年、拙宅にオートグラフが入った時、Marantz model 1 & 5のヴィンテージアンプで大活躍したケーブルです。

Kharma KIC R-1a Reference


オランダのKharma社のインターコネクトケーブルです。
低域の伸びが良く、AETの旧SCRインターコネクトケーブルよりも分厚い感じですが、もたつくことはありません。 高域は旧SCRほどタイトではありませんが、質感を正しく伝えてくれます。
2005年の夏頃中心に、当時入ったばかりのソナスファベールのストラディヴァリのラインとして活躍していました。

LINN SI 12UB


ここからは、今回のTANNOY Reveal 601aを使った比較試聴を行ったケーブルです。
LINNのシルバー・インターコネクトケーブル。銀色の被覆が目印。長さは120cm、方向性があります。
ベーシックモデルのブラックタイプ「BI 12UB」と較べると、高域が華かで、スケール感も出ます。
どことなくAET SINに似た感じで、低域もよくのびているのがわかりますが、解像度がもう少し欲しい気がします。

GRADO SIGNATURE LABORATORY STANDARD AUDIO CABLE


WBT-0147RCAで自作した、150cmケーブル。
JPSの単線ケーブルほどではありませんが、鳴りっぷりが良く、それでいて暴れない高域、繊細でしっとり感もあり、 後述のEvidenceほどの解像度はないものの、弦楽器がとにかく美しく鳴ってくれる、なかなか他では得られない 音楽的な鳴り方をするケーブルです。
GRADOはヘッドフォンやカートリッジで米国では知名度が比較的あるのですが、日本ではほとんど知る人はいません。 国内ではこのケーブルは入手困難。アメリカでは在庫を持っているところがあるようですが、 切り売りケーブルの手持ちがたくさんあり、買いもしないのに問い合わせするのが面倒くさい上に、相手のショップに悪い気が・・・・・・。

NEUMANN XLR 150cm


最初にテストしたのは手持ちの切り売りケーブルをWBT WBT-0147 Midline Miniature RCAで自作したものです。
元来はノイマンのU87Aiなど、著名なハイグレード・コンデンサー型マイクロフォンに接続するためのマイクロフォン用ケーブルです。
現在、このケーブルはPRO CABLEで販売、国内入手が可能です。
ちなみにWebでの価格ですが、ノイトリックのXLRのオス・メス金メッキプラグを付けても、\5,400です!

最初のテスト用での音ですが、シンバルの金属的な音がしっかり芯があって、粒立ちが良いのにドンシャリにならず、 低域はそれほど伸びてはいませんが、モッコリ感した寸詰まり感がなく、キッチリ、カッチリした音で素直。 良い意味で、「ドイツだなぁ」と感心させられました。

  Evidenceと較べたら透明感等は落ちますが、値段を考えたら、Reveal 601aクラスの驚異的サウンドかと思います。 音の芯の点では、Evidenceを上回っているかも知れません。

自作出来る方なら、ぜひ、Reveal 601a側がオス、ソース側がメスのXLRケーブル、あるいはRCAで作ってみることをお奨めします。
 メス側:山型に左から2番 青(ホット),上3番 白(コールド),右1番 シールド(グラウンド)
 オス側:山型に左が1番 シールド(グラウンド),上3番 白(コールド),右2番 青(ホット)
前もってケーブル側にも、プラグ側にも予備半田をしておくと形状を整えやすく、半田の流し込み途中で外れることも少なくなります。

  「マイクケーブルの作り方」をご覧になると良いかと思います。
シールド線の保護にはビニールテープより、熱収縮チューブ(スミチューブ)の方が良いと思います。
一説によると、医療用紙テープが一番良いとか。試しましたけど、違いはあまりわかりませんでした。
パーツセンターが近くにある方なら問題ないでしょうが、地方の方には難しいかも知れません。

PRO CABLEから1.5mものにノイトリックXLRプラグを付けたものが上記価格にプラス600円で出来るとのことなので、 取り寄せてみました。自作テスト用と比較してみて、変換プラグが無い分、音が澄んでいて、立ち上がりが急峻です。
1m RCAモノだと\3,900と超格安です。

ちなみに拙宅のメインシステムでは、ソナスのストラディヴァリには自作のRCAタイプで、JBLのDD66000は7mモノで、 どちらも見事に鳴らしてくれました。

CANARE L4E6S BLACK3m NEUTRIK NC3FXX-B NC3MXX-B


国産の代表的なカナレのプロ用マイクロフォンのケーブルと、ノイトリックの平衡型プラグの組み合わせです。 こんなこと言ったら失礼かも知れませんが、意外にも、普通に聴けます。
低域はそんなに伸びていないし、高域はそれほど粒立ちは良くないのですが、みずみずしく鳴ってくれます。 中域の切れもNEUMANNやGRADOに較べたら落ちますが、それでも他を聴いていなければ、マイクロフォンケーブルのスタンダードと 言われるだけあって、それなりにバランス良く聴ける音ですので、最低でもこのくらいは鳴って欲しいという、AETのEvidenceと違った 意味で基準となる、レファレンス・モデルなのかも知れません。
ちなみにGRADPやNEUMANNからの差は、AETで言うとEvidenceとSINの差ほどもないかも知れません。

福岡市は天神近く、警固公園から国道202号線を渡って、今泉1丁目バス停の前の一方通行の道を南に歩いて行った ところにある、九州唯一のパーツ屋さん、カホパーツセンターで1,000円少々で購入。
ちなみにホームセンターのグッデイは、カホパーツセンターの親会社、嘉穂無線が経営しているとか。 「エレキット」を扱うイーケイジャパンも、2002年に嘉穂無線から独立し、真空管アンプ等でお世話になっています。

NEGLEX 2534 XLR150cm


国産の雄、モガミのNEGLEX2534です。日本のスタジオによく使われているマイクロフォン・ケーブルです。
多少ドンシャリでも、ワイドレンジで元気よくJ-POPが楽しく聴きたいなら、これに限ります。
透明感ではBELDEN8423には及びませんが、これはこれでアリの音かな、 と思わせるだけの音です。
RCAタイプではちょっと腰高な気がしましたが、このXLRタイプでは、わずかに低域寄りにシフトして、とにかくよく弾けてくれるサウンド が、お見事、です。

BELDEN8412 RCA


PRO CABLEのWeb pageでレファレンスのように書かれてある、 BELDEN8412 RCA 1.5mも入手、試聴してみて、拙宅のJBL DD66000にも通じる、グイグイ押して来る、スタイル抜群のボディコン・アメリカ娘的サウンドだなぁ。 肉感も抜群で、弾け方も並じゃない。 アメリカの録音なら、こういうケーブルが合うのだろう、と感心して聴いていました。
ノイトリックのRCAプラグを使用しています。WBTよりもクリアな感じがするのですが、実際、どうなんでしょうか。

BELDEN8412 gold XLR 1.5m


ひょっとしたらBELDEN8412もXLRタイプなら印象が違うのかもしれないと思って、XLRタイプでドンシャリにならないよう、 プラグはノイトリックの金メッキタイプを取り寄せてみましたが、高域の鋭さは透明感が少し加わって聴きやすくなったくらいで、 やっぱりBELDEN8412はXLRになっても、BELDEN8412でした。
ほんと、こんなにグイグイ迫られたら、暑苦しくてたまらんわ、なんて思っちゃいました。(^^; 逆に、システムに活を入れるなら、こういうケーブルが合うのかも知れません。


BELDEN88760 & 88770


赤の外皮が目に鮮やかな、オールテフロン絶縁の左側の写真、 BELDEN88760 や、それを3芯にした右側の写真、 BELDEN88770 もベルデンのケーブルの中では評判が良いようなの で取ってみました。
こちらでは2芯、3芯で音の差がそれほど感じませんでした。88760,88770では音がスピーカーいっぱいに広がり、音像がややボケる傾向にあります。
美音で浮遊感と広がりがあって聴いていて心地良いサウンド、とおっしゃる方もいますが、私、個人としては、実体感が薄れて しまうような楽器の鳴り方には慣れていないせいか、聴いていて気持ちが落ち着きません。

Vital Audio Cable


英国スタジオでは、日本のNEGLEX(MOGAMI)2534のようによく使われている <重心が少し上がった感じで、華やかで高域の伸びはありますが、ドンシャリに感じる時もあります。 音像はやや大きめで、低域はよく出るのですが音がスピーカーいっぱいに広がってしまうので音に芯が無く、時に腰砕け的になるので 、聴いていて落ち着きません。優しい音、と言えば言えなくもないのですが・・・・・・。RCAでもXLRでも印象は変わりませんでした。

BELDEN8423 silverXLR 150cm


たまたまBELDEN8412の下に3芯の BELDEN8423 というのがあって、バランス専用とのこと。 拙宅はバランスケーブル を使用することが多く、以前、LINNのDSにバランス接続で聴いたらRCAより透明感があって良い結果だったので、ものは試しと、 プラグはノイトリック・シルバー・タイプ XLR1.5mを取り寄せてみました。

これが驚きで、確かにBELDENらしい、押しの強さの片鱗はありますが、8412のような押しつけがましさがそれほどではなく、 高域が色彩感が豊かで、みずみずしく、透明感があります。
低域のモッコリ感もなく、実際はローエンドはEvidenceほどは出ていないようですが、とても伸びやかなように聴こえます。
しかも、しっかと地に足をつけ、実体感のある、音像がクッキリ描き出されるところは、NEUMANNのケーブルにも通じるようです。
ただこのケーブル、バランス専用なので、残念なことにRCA タイプは製作上出来ないとか。


BELDEN8423 goldXLR 150cm


プラグがノイトリックのシルバーとゴールドではどう音質が違って来るのか興味が沸いたので、金メッキ分も取り寄せてみました。
銀メッキと較べて音の華かさが少し劣るものの、音像が引き締まって、音像がさらに明瞭になった気がします。それが逆に 音がこぢんまりした、と感じる方がいらっしゃるかも知れません。
微妙な違いですが、音が散らない、余韻が広がりすぎないのも銀と金メッキの違いかも知れません。
これは同じ金メッキの7mのロングタイプで聴いても同じ傾向で、長く伸ばしても音がダレたりしない点は秀逸かと思います。
銀メッキにしても後述のNEGLEX2534と較べて華かさの点では一歩劣りますが、音像をキッチリ余韻部分と本体部分を描きわけ、 NEUMANNのケーブルのように質感を正しく表現する点はさすがです。

ケーブルがNEUMANNほどではないですが、柔らかくて比較的取り回しがし易いのも有り難いですね。
個人的には金メッキの方のキッチリした鳴り方が好きですが、シルバーの伸びやかさも捨てがたく、もう、ここまで来ると、 好き好きですね。
シルバーにせよ、ゴールドにせよ、この8423は、数あるケーブルの中でも白眉と言えましょう。
Evidenceほど情報量はないようですが、ソナスファベールのストラディヴァリほど解像度がないReveal 601aには負担をかけずに、 かえって好都合なのかも知れません。
クラシック音楽用メインシステムのFirst Watt SIT-1はRCA typeだけで、バランス入力がないため、残念ながら試すことが出来ていません。

AET SIN LINE RCA


2013年時点ではすでにこれの改良型、SIN EVDが現行品となり、これは一つ前のモデルとなります。
これが出た当初は、低域も高域もワイドレンジで、空間描写能がとてもよく、これに替わるモノはないと思っていました。 超ワイドレンジは良いのですが、高域がちょっと細やかすぎて、もうちょっと音に芯がほしいな、なんて思っていました。
それでも、これに代わるだけのケーブルがなかなかなく、Evidenceが出た時には驚くとともに、手持ちのSINケーブルを ほとんど売り払って、Evidenceに買い換えることになってしまった、不運のケーブルでもあります。

AET Evidence LINE XLR 1.2m


AETの、そして世界最高峰のインターコネクトケーブルの一つです。
それまでのAETのトップモデルはSINでしたが、これで不満だったローエンドの切れ味、伸びやかさ、高域の芯と粒立ち、透明感を 見事に聴かせてくれ、これだけうるさい私をして、「う〜む」と唸らせるのですから、凄いものです。
このケーブルのさらに凄いところは、通常、何カ所も直列に同じメーカーの同じ製品を重ねる(例えば、DS・プリ間、プリ・メイン間、メイン・スピーカー間)と、 ケーブルの嫌な部分が目立ってきて、それを払拭するべく、他社のケーブルを一カ所絡ませることが多いのですが、 これにはその必要がありません。

最大の欠点は、エージングに時間がかかること。まず、接続して音出しした瞬間、オッと言いたくなるほど高域の粒立ちが良く、ローエンドも伸びていて、 これは、と思わせてくれます。しかし幸か不幸か、それは10分もしない内に大きく変化して、失望の数々を味わうことになります。 5時間ほどエージングしていると、高域はしっとりと、低域は厚みが増して行って、特に低域はモッコリ して切れ味や弾む感じが なくなってしまいます。
クラシック音楽用としては、高域が暴れず、しっとり感が時として見事にマッチしていますが、ジャズを鳴らすと キックドラムがモコモコ、 もたもたして、さらには高域が引っ込んで粒立ちが信じられないくらいに悪くなってしまい、 中低域の音はキレが無くなって、 たいていのジャズファンなら、青ざめること間違いありません。
ほぼ半日くらい経過した後、沈んでいた高域が次第に輝きを増して来ます。 丸一日くらいになると、今度はドンシャリ系の音になって来ます。 中低域はまだモッコリ、寸詰まりのような感じが拭えないが、ジャズもそれなりに聴けるようになり、 少し安堵してくるようになりますが、 今度はクラシック音楽の高域が気になって来ます。もう少し透明感が欲しいし、 低域の伸びやかさが陰を潜めてきて、寸詰まりではどうも 穏やかではありません。

エージングが済んでいったんケーブルを取り外して放っておくと、どうやらこのレベルまで戻るようで、待機電力等、微小電流でも通電して おくのがコツのようです。もっとも、再び通電すれば、 2〜3時間程度で最良の状態まで戻って来ますが、貸し出し用ケーブルなど、 ともすると接続してすぐ判断しがちなので、注意が必要です。
そして1日半が経過する頃から、このケーブルは恐ろしく中低域の俊敏さが増して来ます。 高域はドンシャリが収まってきてみずみずしさの中に透明感すら漂い始めて来ます。 ローエンドもちゃんと出ているのですが、それが徐々に引き締まってきて、モッコリと 妙に盛り上がった感じは次第に少なくなって来ます。 ダブルウーファーのDD66000をまるでアンプを変えたように、 低域のドライブ能力が上がってきて、ダブルウーファーを軽々と弾んで鳴らして しまう音を、この連続する経過を知らずに突然耳にしたら、「見かけは同じアンプだけど、中身をハイグレードなものに バージョンアップ したんだよ」と言われても信じてしまう程です。 高域は粒立ちが見事になってきて、寺島先生のおっしゃる7色のシンバルどころか、総天然色、 PCで言うところのフルカラー、1670万色と でも言いたくなる色彩感は、セーラー服と機関銃の薬師丸ひろ子ではないですが、「か・い・か・ん!」です。



Last update Jun.7.2013