私は今までMarantzはテレフンケンの12AX7がベストマッチングになるように作られて
いるから、という気持ちがあって、Audio Consoletteには必ずどこかにテレフンケンの
12AX7を入れていました。
事実、テレフンケンの12AX7(ダイヤマーク入り)をV2とV3に使用すると、Marantz#7
にも言われていた、Marantzの鋭く厳しい音がします。ところが、V3にMullardの12AX7を
使用すると、少しそれが和らぎます。
しかしいずれにせよ、寸詰まりの低域感は払拭できません。
で、こうなったら物量作戦。
しかも、先入観を捨てて、テレフンケンに拘らず、片っ端から試してみました。
ちなみにV1はフォノイコ用なのでまずはV2とV3を徹底的に試してみることにしたのです。
1) V2:テレフンケン12AX7,V3:Mullard 12AX7
既に書いてある通りで、鋭さは幾分減り、みずみずしさが付いてきます。
音像が少し奥まってしまうのが難点。解像力はまぁまぁでしょうか。
2) V2:Mullard 12AX7,V3:テレフンケン12AX7。
これはMullardが支配的に出てしまいました。
ちょっと寸詰まり感が強くなってしまいましたが、厳しさは減りました。高域の伸びかさが出てきたのは良いのですが、周波数特性的には伸びていない様です。どうやらAudio ConsoletteはV2が音を支配する様に思います。
3) V2:Mulard 12AX7,V3:Mullard CV4004
とっても伸びやかなサウンド。低域も高域もかなり伸びています。
ただ、実際の高域は出ているかどうか?
しかし、低域の量感は抜群で、CV4004は以前使っていたシェルターのプリアンプでも活躍していたことがあり、可能性を感じさせてくれました。
4) V2:Mullard CV4004、V3:Mullard 12AX7
これはいただけませんでした。
V2が支配するだけあって、もっこり切れ味のない肥大した音像となってしまいました。
でも、演奏者をグッと近づけてくれ、一音一音を解きほぐして聴かせてくれるような解像力の良さは、特筆すべきものがあります。
この時点で、V3にMullardのCV4004を使って良い組み合わせは出来ないものかと、考えてみるようになりました。
5) V2:テレフンケン12AX7,V3:Mullard CV4004
音が空中分解してしまいました。
鋭さと優しさが同居しながら互いに牽制しあっているかのような音。
聴いていて耳をつんざく高域とぼてぼてでコントロール出来ない低域に愕然としてしまいました。
6) V2 & V3:GE 12AX7(old type)
懐かしい古き良きアメリカの音。
ちょうどパラゴンなどが活躍していた頃のジャズの音が聴こえて来る様です。
低域も高域も伸びていないのですが、スピード感はやたらにあり、音像は遠目です。
7) V2: GE 12AX7(old type),V3:Mullard CV4004
どうしたわけか、透明感の全くない、低域は量的には出ているのですが、寸詰まり感の強いサウンド。やはりヨーロッパとアメリカ混在ではなかなかうまくいかないのでしょうか?
8) V2: GEC CV492,V3:Mullard CV4004
古いCVナンバーのGECの12AX7互換品。これはちゃんとしたペアが2本しか無いので、今まで#7のV6で試したことがあるくらいで、実際は使ったことはありませんでした。
ところがどっこい、この組み合わせは、驚くほど実在感のあるサウンドになってくれました。3)の組み合わせに非常に近い鳴り方をします。
しかし、「音のケバ」がもう少し出てくれまして、音の堅さもちょうど良い感じで、何よりも今までより数歩、演奏者に近づいて一緒にプレイしている感触を味わうことが出来るようになったんです。それから驚いたことに、BILL EVANS TRIO「WALTZ FOR DEBBY」、Village Vanguardのお客さんの会話がちゃんと聴けるようになったんですねぇ〜。
5曲目の「SOME OTHER TIME」で、お客さんの呼び鈴(?)がかすかに鳴るのですが、これがちゃんと定位して鳴ることは勿論、奥にいるお客さんとステージの近くのお客さんの会話の距離感がしっかり出てくれるようになるとは、本当に感激ものです。
ただ、このGECの真空管、どこを探してもほとんど見つけることは困難です。
そこで一番近いサウンドを聴かせてくれたMullardの12AX7を再び刺してみたのですが、前と音が違う様です。
しかも、GECの音に非常に近くなっている! 再びよく見てみると、なんと、Mullardの12AX7には、ゲッターの形が2種類あり、現在最も多くて先ほど試してみた丸形と、今度刺さっていたGECと同じ角形があるのです。
この角形は、つくりがGECとあまりにも良く似ているし、Mullardならまだ探せばありそうな気がしたのですが、なかなか無いものなんですねぇ。
9) V2: Blimer CV4004,V3:Mullard CV4004
ちょっと期待して買ってきたBlimerです。
V2に使用しますと、確かに中庸の見事さ、音を破綻させずにまとめあげるワザは素晴らしい。
しかし、GECの音を知ってしまった後では、ちょっと「音のヒゲ」が無く、低域の伸びももう少し欲しい気がして、物足りなく感じてしまいます。V2をMullardに、V3をBlimerに換えてみたところ、これはMullardの悪いところが目一杯出てしまって、トロトロとした中低域にはさすがに1時間以上、付き合い切れませんでした(^^;
ところがこのBlimer、V1に使うと俄然生き生きとしてきまして、聴くジャンルによってはフォノイコ用に使うと、良い結果をもたらすかも知れません。
と、ここまで、テレフンケンの真空管をV2もしくはV3どこかに使う方法を中心に試聴してきました。
ところが、我が家にJPSの新型インターコネクトケーブル、JPS Labs Superconductor 2が来まして、今までの真空管の選択を根本的に考え直さないといけない事態になりました。
何しろこのケーブル、実に元の楽器や声の質感を正確に表現しようとするケーブルなのです。
V2にGEC、V3にMullardを使用し、CDプレーヤーからMarantzのプリまでのインターコネクトケーブルという組み合わせでは確かに一聴すると良く聴こえるのですが、インターコネクトケーブルをJPS Labs Superconductor 2に換えた時の質感の見事さには敵いません。
そして、何と、インターコネクトケーブルがJPS Labs Superconductor 2の条件下において3週間の比較試聴をした結果、質感表現の的確さにおいて、また、低域から高域まで整った質感という点において、やっぱりMarantzのAudio Consoletteには、テレフンケンの12AX7がベストであることを再確認させられました。
そういう訳で、1998年12月25日からは、Audio Consoletteにはすべてテレフンケンを使用しています。