オーディオって、本当にわからないものです。 あの、\2,289,000円もする鳴り物入りで、B&W Sigunature Diamondの伴侶となるべくやってきたVitus Audio SS-010を僅差ながら破った、\1,449,000 税込(フォノステージ付),\1,344,000 税込(ラインレベル)のOCTAVE V80。ただし、真空管をMullardのEL34,12AU7に交換して、しかもXLRのバランス入力での薄氷の勝利でした。 その後もAyreのプリアンプKX-RとメインアンプMX-Rとの、どうみても勝ち目がないかと思われたバトル。しかし呆気ないまでの幕切れで、「そんなバカな」と思いたくなるほどの、V80の劇的勝利。 やはり、石のアンプは真空管アンプに勝てないか、と思っていた矢先のことです。 オーヴァーという石のプリメインアンプが良いよ、という噂をききつけ、試聴してみることにしました。 100Wクラスならまだしも、オール石のアンプで25W。値段もVitus Audio SS-010から較べたら、5分の1未満。Ayreのセパレート・トップモデルをいなしたV80に、税込み価格\493,500のプリメインアンプが勝てるわけはないと思いながら、一縷の望みを託して、2010年6月25日の夜、届いたばかりのアンプをつないで試聴してみました。 その時の驚きを、適切な言葉にすることが出来ないもどかしさ。 五味康佑氏なら、どんな言葉で表現するだろう、なんて考えてしまいました。 音が出た瞬間、アンプの値段や、これがプリメインアンプだなんてこと、すっかり忘れてしまって、「凄い!」と、思わず口にしてしまいました。 OVER PREMAIN AMPLIFIER MODEL PM1。 出力用MOS-FETは東芝2SK1530/2SJ201のシングルプッシュプル。 460VA Rコアトランス。 整流ダイオードはショットキーバリアダイオード。 電解コンデンサはルビコンのブラックゲート、エルナーのトーンレックス。 アッテネーターは23接点22段階のセイデン製ロータリーSW。 フルテック製高級SP端子に、3Pインレット。 メジャーループNFBを廃し、マイナーループNFBは極小化した、大庭公司氏の手による、わずか25Wのプリメインアンプ。 カタログにはそう書いています。 これを見た人は、「アマチュアでも作れそうな内容だな」と言うかも知れません。 でも、今まで拙宅に十数人、アンプを持ち込んで来て試聴しましたが、最後はお決まりの「10分の1の価格で、これだけの音が出るんですよ。凄いと思いませんか?」と、負けを認めながらも、価格差でアドバンテージがある、と主張する。そういう製作者を何人も見てきました。 でも、正直、価格や石・真空管に関係なく、音だけで勝負して、最初から「凄い」と言わせたアンプは、Marantzのmodel 1以来です。 とても25Wとは思えない瞬発力十分なドライブ能力と、深遠で清浄な色香と気品があり、そう、音に「品格」があるのです。 高域も十分出ているし、ローエンドも素晴らしい伸びで、パンチ力もある。空間分解能も見事。でもそんなのは、とっくにクリアして、もう、別次元な「品格」のある音、なのです。 本当に、これには参りました。 今までは、B&W Sigunature Diamondはサブシステム的な存在でしたが、OVER PM1の伴侶を得てからというもの、JBL DD66000やSonus Faber Stradivari Homageに負けない、立派なメインシステムです。 もし、もっと早くに、そう、20年くらい前にこのアンプ、このシステムと出逢っていたら、もう、迷うことなく、音楽を聴く楽しみを満喫できたに違いありません。 そして今までオーディオに投資してきた金額との差を考えると、眩暈がしそうです。でも、だからこそ、オーディオは奥が深いというか、止められない、のでしょうね。 |
入力セレクターの所に白い灯りが点灯します。木の感触が素敵です。アッテネーターのクリック感触もなかなかなものがあります。シンプルな作りが気に入っています。 |
XLRバランス入力が一番音質が良いと思います。電源3Pインレットの位置の関係上、スピーカー端子に繋ぐスピーカーと当たって、取り回しに一工夫が必要です。また、バイワイヤリングは少々やり難いのが難点。 |