■ プロ用ステレオ・パワーアンプを使用してみる ■


Thomann S-150 Mk2


中央下段のアンプは、PRO CABLE社のWebで見つけ、ヤフオクで落札した、 ドイツThomann社のプロ用ステレオパワーアンプ、Thomann S-150 Mk2で、601pに繋がっています。
さすが、楽器メーカーだけあって、芯のある、浸透力の強い、誤解を承知の上で敢えて言わせていただくなら「生音に近い音」を奏でます。
ただ、このアンプ、欧米をターゲットにしているので、電源電圧が240V、115Vの対応がメインで、日本のような100Vには 基本的には対応しておらず、マイナーチェンジした最新のアンプでは保護回路が働いて、音が鳴らない場合があるようです。

さらにスピーカー接続には、NEUTRIK NL4FXという、特殊なスピコンという接続プラグを使用しなければなりません。このスピコンは、半田を 使わない優れもので、それなりに評価したいところですが、実際に作ってみると、これがなかなか難しい!

工具もPOZIDRIV TIP SCREWDRIVERS(=ポジドライバー)という、ちょっと変わった尖端の ドライバーを使用しなくてはなりません。それに太めの2芯を絡めて使用するケーブルは、10AWGを超える場合は、よっぽど うまく絡めないと、スピコンの金属穴部の奥まで入りません。入っても特殊なポジドライバーで十分な締め付けを行わないと抜けやすく、 素人には少々製作が難しいように思います。

スピーカー用のターミナルはあるのですが、なんと、普通のYラグが使えないのです。 ケーブルを差し込む穴はあります。ですから、10AWGくらいまでの裸線を入れることは出来ますが、軸式ではないので、Yラグは使用できません。
その上、楽器用なのでアンバランス入力はphone、バランス入力はXLRという対応。

何度もくじけそうになりながら、逸品館で手に入れた AET SIN 切り売りケーブルを、スピーカー側は同じWBT0681Cuのままですが、アンプ側はNEUTRIK NL4FXに変更し、音出ししてみて、息を飲みました。

それまでは、アンプにYラグが使えないため、スピーカーケーブルは裸線を直接差し込める、 AET PRIMARY F150を使用していました。
これはこれで、アンプの性格をきちんと出して、浸透力のある見事な音を奏でていましたが、 一つ前の世代ですが、AET PRIMARY F150よりも5ランクほど上の、 AET SIN SP NEUTRIK NL4FX --> WBT0681Cuでは解像度が一気に増して、 見通しも良くなり、ますます浸透力のある、熱気あふれる音を奏でるようになりました。

どなたか、電源トランスを100V対応にして載せ替え、スピーカーターミナルをWBTに、phone入力をRCAに変えて出してみませんか?
あるいはそういった交渉を、ドイツThomann社に対してやっていただける方はいませんか!

ヤフオク落札価格は29,800円。
現在、通常販売しているPRO CABLE社のWebでも4万円を切る価格帯です。
ちょっと手を加えてこういった対応が出来るなら、59,800円で出しても、飛ぶように売れると思います。
でも、そんなことしたら、国内外のオーディオメーカーが百万円超で出しているアンプがまったく売れなくなってしまいそうです。 それくらい、凄い音だと思います。

それなら拙宅のVIOLA LEGACYやSOLOの魅力はなくなったか、と言うと、そうでもありません。
SOLO --> LEGACYの組み合わせで聴く、いざとなったら部屋の窓硝子が割れるくらいの圧倒的なパワー感を秘めた、余裕のある音 というのは、これまた格別です。
さらに、AETのEvidenceシリーズのケーブルを全てに使用しているアドバンテージもあるでしょうが、VIOLAで聴かせる色彩感の豊かさ、 七色のシンバルなんか遙かに突き抜けてしまった、フルカラーのシンバルの音には、さすがのThomann S-150 Mk2 も及びません。VIOLAの音を一度でも聴いてしまうと、Thomann S-150 Mk2では、色彩感の乏しい、 一本調子の音に聴こえてしまいます。
しかも常に全力で突っ走っていて、いつも声を絞り出すように張り上げている感じで、少々、聴き疲れする音です。 これほど浸透力のある音を受け止めなければならない聴き手に、それ相応の体力や精神力までをも要求される音、でもあります。

否定的なコメントを書いてしまいましたが、でもそれは、VIOLA LEGACYやSOLOの音と比較してのことで、あまたのコンシューマー用オーディオ製品 の中で、Thomann S-150 Mk2と比較してモノが言える製品は、そう多くはないことを、改めて、重ねて 申し上げておきます。
Thomann S-150 Mk2の音は、車で言うところの、エンジンを常に高回転でまわしていないと 本領発揮できない、F1用スポーツカータイプ。
一方、VIOLA LEGACYは、同じスポーツカーでも、アウトバーンを軽快に走る目的で作られたポルシェ911。 もしくは乗り心地を考えると、ベンツのSクラス、五味康祐氏風に言うなら「ジャガー」と言ったところでしょうか。

ライブをはじめとするプロの現場ではThomann S-150 Mk2が再生する生音に近いサウンドが好まれるのでしょうが、 一般家庭にそれをそのまま持って来て、リラックスして楽しめるかというと、なかなかそういうわけにはいきません。
真空管アンプの、たとえばEAR V12で聴かせてくれた、ふわりと浮き上がるような空気感や優しい肌触り、とろけるような舌触り、ゾクリとさせられる ようなデカダンスを感じさせる色気というのは、Thomann S-150 Mk2にはありません。
でもそれは、最初から求める方向性、視点が違うのですから、仕方がないと言うか、当然の結果で、ここまでのレベルとなると、 好みの問題もあります。どちらが良い音、劣る音と決めつけるわけにはいかないし、その必要性も感じません。

そういったところの音作りの難しさというか、奥深さが、今回のテストで、よくわかった次第です。
ある意味では、拙宅のメインシステムの素晴らしさ、存在意義を再認識させられた、と言って良いかもしれません。
それにしてもThomann S-150 Mk2の費用対効果と言うか、コストパフォーマンスの 高さは異常です。(笑)

ちなみにソースは中段にあるLINN Renew DS(Klimax DSの中身をupdateする際、抜き出した前のDS本体を再利用したもの)です。
面白いことに、このDSの電源ケーブルは、PRO CABLE社お勧めの 「WATTGATEプラグ A2D SOLUTINS シールド電源ケーブル」 は、 高域の線が細く、ドンシャリの安っぽい音になって、本当に合いません。


こういう時の出番は、やはりAET Evidence ACで、他のLINNのDSも含め、断然、相性が良いようです。
LINN DSのシリーズのように、コンシューマー用に作られた製品は、コンシューマー用の最高峰と思われるAET Evidence ACの 方が相性が良いのかもしれません。
あんなにWATTGATEプラグ A2D SOLUTINS シールド電源ケーブルは、 Thomann社のアンプやALLEN&HEATHのDJ用ミキサーには相性が良かったのですが・・・・・・。不思議なものです。

すでにお気づきになった方がいらっしゃるかと思いますが、中央のオーディオラックは、クアドラスパイアの新しい、 Q4シリーズ・スリット入り・チェリー・追加棚板(QUADRASPIRE Q4SL/CH/SO)を使用したものです。
板厚が従来品よりあり、奥行きはQ4 Midiと同じで幅はQ4Dと同じ。つまり、少し横長タイプで、パワーアンプのThomann S-150 Mk2 のサイズにピッタリ。しかもスパイクやポールは流用可能。 拙宅のようにセッティングがしょっちゅう変わるようなユーザーには、うってつけです。

ALLEN & HEATH XONE:92


中央上段にあるのは、前回にも説明しましたが、PRO CABLE社のWebで見つけた、 ALLEN&HEATH DJ用ミキサー XONE:92です。 これをプリアンプ代わりに使用しています。

入出力が豊富で、音がフレッシュ。ちょうど、ルボックスのオープンリールやSTUDER A730を初めて聴いた時のような印象です。
Thomann S-150 Mk2にも通じる、音の芯の強さ、があるように思います。
前面のTANNOY Reveal 601だけでなく、後方のVIOLA LEGACYに繋げて、メインのJBL DD66000を鳴らしてみたりしています。
さすがにVIOLA SOLO経由の、野太いのに繊細、ローエンドは見事に伸びていながら腰の据わったガッチリとしたピラミッド構造の 低域に支えられ、空気を切り裂くような芯があって一直線に飛んでくる色彩豊かなシンバルの音、 というわけにはいきませんが、 とても148,300円とは思えない、勢いのあるフレッシュなサウンドは、それはそれで非常に魅力的です。

アナログプレーヤー用のフォノ入力が4系統も使えるのはさすがDJミキサーと言いたいところですが、入出力端子がフォーン・プラグ(phone plug) 前提だったりする部分があって、変換ケーブルを作らないと十分活用出来なかったりします。
ちょうど、このALLEN&HEATH XONE:92 DJミキサーを販売しているPRO CABLE社で、バランス専用ケーブル BELDEN 8423を取り扱っており、しかもTRS phone plug-->XLR変換の製作まで行ってもらえるので、ALLEN&HEATH XONE:92 の性能を存分に発揮したサウンドが楽しめます。


熱収縮チューブ


AETのPRIMARY F500やSIN,HHLなどのケーブルの端末加工、処理には12mmと6mmの熱収縮チューブがあれば、十分です。
けっこう、綺麗に出来ます。もちろん、それなりの工具も必要です。

RELIEF heat gun RHG-1500


温度調節の出来る、高熱量1500Wタイプの、熱収縮チューブを収縮させるためのヒート・ガンです。
60℃〜1500℃まで調節出来るとのことですが、温度の目安は印されていないので、まずは一番低めでしばらく暖めて、少しずつ温度を 上げていかないと、火傷してしまいます。
また、高温で使用後、すぐ電源を切ると、熱で内部がやられてしまうようです。いったん、最低温にまで下げて数分間、空冷してやる必要があるようです。
先端の形状は箱の中にあるようなものに差し替えできますが、シリコングリスを塗って差し替えしないと、次第に抜け難くなってくることがあるようです。
ちなみにAmazonでは4,000円を切る値段で出ていたりします。

スピコン(SpeakON) NEUTRIK NL4FX


ノイトリック社がPA用に開発した、抜け防止機構付き大電力対応のプラグです。
NEUTRIK NL4FXは4芯対応ですが、実際に使用するのは、爪側の「1+」と「1-」の 2つだけ。2番はBTL接続などに使用するようです。2芯用のものは抜け難いということなので、この「NL4FX」がスピコンのデフォルトになります。
半田を使わないのはありがたいことですが、実際に作ってみると、これがなかなか難しい!

工具もPOZIDRIV TIP SCREWDRIVERS(=ポジドライバー)という、ちょっと変わった尖端の ドライバーを使用しなくてはなりません。それに太めの2芯を絡めて使用するケーブルは、10AWGを超える場合は、よっぽど うまく絡めないと、スピコンの金属穴部の奥まで入りません。入っても特殊なポジドライバーで十分な締め付けを行わないと抜けやすく、 素人には少々製作が難しいように思います。

スピコンは、PRO CABLE社のWebから注文が、けっこう値段も安くて即納なので、重宝しています。


スピーカー・ケーブル製作工具


右端にあるのは、ケーブル・ストリッパー。ストリップする長さを一定にするゲージが付いていて、スピコンなどの製作時に、 正確に12mm指示に対して、対応しやすく、また、+と−で露出させる芯線の長さが違ってしまうことも防止できます。
左端はケーブルカッター。スパッと綺麗な切り口で、ニッパーで切ると外皮が綺麗に切れなかったりするので、頼もしい逸品です。

ニチフ Yラグ 5.5AWG 6mm


ニチフ Yラグは、普通のホームセンターで売っています。
ただ、TANNOY Reveal 601p用のねじ穴6mmで、ちょっと太めの5.5AWGケーブル用となると、「お取り寄せ」になってしまうようです。
しかも、ばら売りはしない、100個入り。でも、ご安心ください。ニチフ裸端子 先開形 品番5.5Y-6 数量100pcs. お値段は1,433円。

圧着ペンチが必要なことはもちろんですが、Yラグの汚れ取りには「セーム革」を使用してやると、微粒子が取れて密着度が良くなるのか、 音もクリアになるようです。「銅磨き布」でも良いのですが、艶出し剤が入っている製品が多く、音的にはあまりセーム革とは差はない ように感じますが、精神衛生的観点及び入手し易さからも、「セーム革」がお勧めです。
手で触って凹凸が感じられる場合は、IH用消しゴム(焦げ落とし)でこすって凹凸を無くし、仕上げは「劇落ちくん」等の「メラミンフォーム」 (メラミンスポンジ)を使用。水で洗ってティッシュで綺麗に水を拭き取り、拭き上げは「セーム革」で行います。
これだけ手をかけてやると、あら不思議。気持ちの問題もあるのでしょうか、音がとてもクリアになった感じになります。
ただ、これを100個全部にやろうとすると大変です。気力も持ちません。「セーム革」だけでも良いのではないか、と思っています。

音の特徴に関しては、「ありません」というのが特徴かもしれません。
正確に言うと、銀やロジウムメッキ等にくらべて少し音が野太くなって、落ち着く感じです。
WBTのYラグ、WBT0645Cuのような鮮やかさ、透明感はさすがにありませんが、ケーブルの本来持っている音をねじ曲げるような感じ、 ベクトルの向きが変わるような感じはしません。
そういう意味で、基本中の基本、reference的なものかと思います。


Last update Aug.15.2013