■ 映画の話 ■

 あまり知られていないことですが、実は私、大の映画ファンなのです。そこ で今回は大好きな映画の話を書くことに致します。  私が中学の頃、たまたま付けたテレビで「ローマの休日」をやっていて、オ ードリー・ヘップバーンの妖精のような可憐さに、もう、ぞっこん。それがき っかけで映画を見始めるようになったのですが、普通ならばここで「オードリ ー・ヘップバーンのような素敵な彼女が欲しい」とか「グレゴリー・ペック演 じる新聞記者になりたい」、あるいは「監督になってこんな映画を撮ってみたい」 と思うところなのでしょうが、私はなぜか「こんな脚本を書いてみたい」と思 ってしまいました。

 大学時代、親に内緒で東京のアングラ劇団に入り浸って、そこ で演出助手をやったり、ついには脚本を書くまでになったものの、東宝や東映、 松竹などで撮影に参加したり、専属の脚本家になるには大学を辞めねばならず、 残念ながら映画人としての道を諦め、あくまで見る側として映画に接すること になりました。もっとも自宅に居ながらにして出来る脚本のバイトは続けてい ましたが...。

 さて、その映画ですが、もしお勧めの映画を一本だけ選べと言われたら、私 は躊躇なくビクトール・エリセ監督の「ミツバチのささやき」を選びます。も ちろん、「2001年宇宙の旅」や「ブレードランナー」も大好きですし、アンジ ェイ・ワイダ監督の「灰とダイヤモンド」も見たいし、小津安二郎の戦後松竹 で上映された作品や黒沢監督の「七人の侍」も外したくないのですが、「ミツバ チのささやき」ほど他愛ない日常に題材を得ながら、日常に影を落とす戦争(ス ペイン内戦)、そして聖なるものに対する憧憬と畏れを、幼い少女の澄んだ瞳を 通して美しい映像で心に迫ってくる作品は、他にはなかなかお目にかかれませ ん。

 とは言うものの、「マトリクス」のように最新技術を駆使して映像的にも、ま た音響的にも優れた作品が創られるようになってきたので、私の職場の待合室では 5.1chのサラウンドで映画を楽しむことも出来るようにしています。
 もっとも、具合の悪い方がお待ちになっている中、ベトナムの地をアメリカの 戦闘機が大音量でワーグナーの「ワルキューレの騎行」をバックに空爆、とい うわけにはいかないので、静かにクラシック音楽を流し、50インチのプラズマ・ ディスプレイではPower Pointでお知らせなどをスライド・ショーにしてご覧 いただいています。

 ちなみに「マトリクス」は、押井守監督のアニメ作品「攻殻機動隊」を観た アメリカの映画監督ウォシャウスキー兄弟が、「実写でこのような作品を作りた い」と言って作り上げた作品とか。日本でもファンが多く、三部作の第二部が 今年の夏公開され、大変好評でした。しかし、いかにアメリカでも、「千と千尋 の神隠し」のような日本文化に根ざしたアニメを実写にすることは出来ないで しょう。もっとも、「七人の侍」をアレンジして「荒野の七人」を作り出し、手 塚治虫のアニメ「ジャングル大帝」を「ライオンキング」に、「新世紀エヴァン ゲリオン」の庵野監督が10年前に創ったアニメ、「ふしぎの海のナディア」を 「アトランティス」としてヒットさせているアメリカのこと。思いもよらぬ作 品に仕立てて我々を驚かせてくれるかも知れません。

初出 2003.10
Last update Jan.8.2007

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