■ 嘔吐下痢症とノロウイルス ■


1)嘔吐下痢症の原因と検査について
・冬場に流行する嘔吐下痢症の多くは、ノロウイルスが原因と言われています。以前はノーウォークウイルス、その後は一時、 小型球形ウイルスとも言われ、2002年8月から現在のノロウイルスの名称になりましたが、実は以前からあった、主に冬場に流行する、 お腹の風邪です。
・喉が痛い場合はアデノウイルス、乳幼児で便が白っぽい場合はロタウイルスの可能性もありますが、ノロウイルスに較べて、 症例数は多くはありません。
・ノロウイルスの検査は保険が効かないので、自費で2万円以上、結果が出るまで4-6日間かかります。現在日本で流行のノロウイルス による嘔吐下痢症は、通常は3日間前後で治癒することが多いので、原則的に症状で判断し、保健所以外、検査は行わないところが ほとんどです。

2)ノロウイルスの感染経路
・ノロウイルスは魚貝類に多く、カキや二枚貝が代表的です。
・人と人との感染の場合は、手や衣服を介しての接触感染が多いようです。
・トイレ等の床などに落ちていたウイルスが乾燥して舞い上がり、空気感染する場合もあります。

3)ノロウイルスの潜伏期間
・ウイルスが体内に侵入して、半日〜2日(12時間〜48時間)で発症することが多いようです。
・カキなど、ウイルスが大量に含まれている食品を摂取した場合は、数時間で発症することもあります。
・感染力は下痢が良くなっても1〜2週間ほど残りますので、7-8日後にうつって発症することもあります。
・ノロウイルスには20種類ほどあり、いったん治っても、型が違う別のノロウイルスで発症する場合もあります。

4)ノロウイルスで発症した時の症状
・基本的には急に発症する嘔吐下痢ですが、個人差もあり、ひどい嘔吐が中心で下痢にならなかったり、少し軟便程度で 終わる場合もあります。逆に少し気持ち悪いくらいで、吐き気は少なく、下痢の症状が激しい場合もあります。

5)ノロウイルスの駆除・予防方法
・85℃以上で、なおかつ1分間以上の加熱をすればノロウイルスは死滅すると言われていますが、不十分な加熱の場合は、 中に残っている場合があります。電子レンジを併用して内部を過熱すると、より効果的です。
・ノロウイルスは、アルコールでは死滅しないので、アルコール消毒では予防できません。
・ハイターなどの塩素系漂白剤がノロウイルスに有効です。100〜200倍に薄めて、吐物や便器、トイレ内部、ドアノブ、 手すり等、こするように消毒します。その際、手袋をして手が荒れないようにし、また、塩素で目や喉をやられるので、 換気にも注意して下さい。酸素系漂白剤とは絶対に混ぜないようにして下さい。
・接触感染予防として、一般的には、石鹸を使って、よく手洗いをし、ウイルスを洗い流すようにすると良いでしょう。
・下痢や吐物が付着した衣類は、他の洗濯物とは別に洗い、漂白剤を使って消毒も兼ねて行う方が良いでしょう。

6)ノロウイルスによる嘔吐下痢症の治療、他
・基本的にはウイルス感染症なので、抗生物質が効きません。点滴は脱水予防のために行う場合があります。
・しかし別の病原菌が体内に侵入したり、腸内の菌のバランスが崩れて症状がひどくなることもあるので、抗生剤を使ったり、 腸内細菌のバランスを整えるビオフェルミン製剤を使用することがあります。
・下痢がピタッと止まってしまったら、吐き気や嘔吐がひどくなる場合もあるので、下痢止めの薬は止めて下さい。
・ノロウイルスの嘔吐下痢症で亡くなる方がいますが、これは下痢で脱水がひどい場合、吐物で喉を詰まらせた場合、 吐物を吸い込んで誤嚥性肺炎を起こした場合がほとんどで、通常は3日前後で軽快し、ノロウイルスだけで死亡することは、 まず、ありません。

初出 2007.1.17
Last update Jan.17.2007

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